ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

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数値モデルの観点から研究に取り組む利点を1つあげるなら、それは現象の支配メカニズムの理解にあると思います。特に北極のような大気、海洋、海氷が共存する複雑な領域において、どのプロセスがどのように大事であるかといったことを理解するには大きな助けとなります。例えば、海洋や海氷が時間変化しない場合、北極域の低気圧はどのように振る舞うか、といったやや空想的ともいえる問いに対しても物理法則に従った答えを用意することができるわけです。しかし、それにはモデルがうまく現実の世界を再現できている必要があります。また、モデルには各モデル固有の特性があります。例えば、地表面温度が現実に比べ高めに出やすいモデルを使用すると、陸上の雪は過小に表現されます。仮に、この結果が現実的な雪の積雪量とうまく対応していても、それは偶然でしかないわけです。モデルのもつ特性を認識しつつ、モデルがうまく現実をとらえていることを確認することが、数値モデル研究の第一歩目です。しかし、北極域はデータの入手すら困難で、これらの評価を行うことが容易ではありません。数値モデルの観点から北極域を科学することの難しさは、第一歩目からあるわけです。

寒波の到来と成層圏突然昇温

北極の温暖化が進行する中で、北極海の海氷が急速に減りつつあります。我々のグループでは、北極海の海氷減少に伴う大気循環の変化を調査し、日本を含む中緯度帯でどのような気象現象が現れやすくなるかを研究しています。

その中から今年に入って出版されたばかりの論文Hoshi et al., 2019, JGR-A. 「Weak stratospheric polar vortex events modulated by the Arctic sea ice loss」 をご紹介します。

北極評議会(Arctic Council: AC)の作業部会の一つである北極圏監視評価プログラム作業部会(Arctic Monitoring and Assessment Programme: AMAP)の第32回年次会合が9月25-27日の間、スウェーデンとSaami Council(サーミ評議会)がホストを務める形で、スウェーデンのキルナで開催されました。AC正式メンバーである北極圏8カ国(カナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、アメリカ合衆国)と先住民団体6団体のうち3団体(ICC(イヌイット極域評議会)、 AAC(北極圏アサバスカ評議会)サーミ評議会)に加えて、オブザーバー国6カ国(仏・独・伊・日・蘭・韓)や関係団体(EC, IASC, UNEP, UArctic, WMO)が参加しました。

今年の8月にカナダの北極域にあるTremblay Soundという入り江を訪れ、ニシオンデンザメの生態を調査してきました。この場所ではカナダの水産海洋省(Fisheries and Oceans Canada)が中心になり、Ecosystem Approach in Tremblayという大掛かりなプロジェクトを展開しています。プランクトンから魚類、鳥類、はたまた海生哺乳類に至るまで、いろいろな海洋生物を同時に調査することによって北極の海洋生態系を総合的に理解しようというプロジェクトです。

気候変動のより正確な予測のためには、過去の気候・環境の変動の歴史を知ることが重要です。氷河や氷床を掘削して得た氷(アイスコア)の成分や内部に含まれる不純物・気体の分析を通して、過去の気候や環境を復元するための情報を得ることができます。

2018年7月8日に日本を出発し、翌日ケベックシティーに到着。ラバル大学で、調査に向けての最終打ち合わせと調査物資の最終確認と積み込みをしました。今年のメンバーは、私の他に、ラバル大学准教授のAlex、フィールド技術員のDenis、ポスドクのCatherine、ケベック大学Chicoutimi校大学院生のEliseの合計5名。Alexはサンフランシスコ出身のアメリカ人ですが、他の3名はみなフレンチカナディアンです。

初めまして。三菱電機株式会社の杉山と申します。

幼少期から北極や地球温暖化に興味があり、自分の専門分野(電力・エネルギー)と絡めて何か貢献ができないものかと模索していたところ、本募集(若手技術者派遣)を見つけすぐに応募しました。幸運にも採用いただき、本当に感謝しています。