ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

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北極評議会(Arctic Council: AC)の作業部会の一つである北極圏監視評価プログラム作業部会(Arctic Monitoring and Assessment Programme: AMAP)の第31回年次会合が9月12-14日の間、アイスランドのレイキャビックで開催されました。AC正式メンバーである北極圏8カ国(カナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、アメリカ合衆国)と先住民団体6団体のうち3団体(ICC(イヌイット極域評議会), AAC(北極圏アサバスカ評議会), and Saami Council(サーミ評議会))に加えて、日本をはじめとするオブザーバー国(12カ国中6カ国)や関係団体(PAME, CAFF, IASC, Arctic Economic Council, ICESなど)が参加しました。

私たちはテーマ6の生物多様性課題のもと、7月上旬から8月下旬にかけてカナダ北極サルイットでの陸上生物の多様性調査を行いました。本調査の目的は、北極域に広がるツンドラ地域の植物や微生物の多様性を明らかにすることにあります。

今年から2年間はアメリカが議長国となります。今回はアメリカにとっては議長国となって初めての役員会合でした。議長はU.S. Fish and Wildlife Service(アメリカ合衆国魚類・野生生物局)のCynthia Jacobsonが就任しました。

自然環境を人間との関係から切り離して対象化する「科学(Science)」と、人間が自然環境と密接な係わりを持ち、それに巻き込まれる存在であることを前提とする「Indigenous knowledgeやTraditional Ecological Knowledgeを含む在来知(以下、在来知)」とは、いかにして共存し、協働することができるのだろうか。

上記の問いは、直接的・間接的にかかわらず、近年の北極研究の領域で、頻繁に耳にするようになりました。そもそも、科学と在来知とを二項対立的に捉える思考は、人間と環境の関係をどのように解釈するか、ということと係わります。一方の科学は、人間と環境の関係を二元論的に捉え、還元主義的、客観的、分析的且つ機械論的に理解しようとするのに対して、在来知はそれを一元論的に捉え、全体論的、直感的、経験的且つ精神論的に理解しようとします。もっとも、この対照性は、先行するいくつかの研究で指摘されてきたように、それらが語られ、流通される際に創出された差異に過ぎません。科学に直感を排除する機能が備わっているわけではないし、在来知に分析を拒む意図があるわけでもないからです。ただ、こうした整理は、科学と在来知とを、分析可能な概念として操作化することに貢献する可能性を有しています。

グリーンランド・ボードイン氷河およびフィヨルドでの観測終盤に、カナックの住民とワークショップを開催しました(2017年7月30日)。2016年に続いて二回目となるこのワークショップは、現地の研究協力者Toku Oshimaの発案と協力で実現したものです。

テーマ6の生物多様性課題では、昨年に引き続きベーリング海北部セントローレンス島で海鳥の生態に関する調査を実施しています。今年は7月中旬〜8月下旬まで極地研、北海道大学水産科学院、アラスカ大学フェアバンクス校から5名の研究者が入れ替わりながら現地エスキモーのガイド2名とともに調査を進めています。私自身は7月12日から28日まで現地入りして野外調査を行ってきました。

グリーンランド北西部のボードイン氷河における観測が無事終了しました。2017年の観測では観測隊が2つのチームに分かれ、それぞれが異なるベースキャンプを置く形で行われました。一方のチームは北海道大学の研究者5人とスイス連邦工科大学(ETH)の研究者1人からなり、氷河東縁部のキャンプを拠点にカービングフロントを中心とする氷上での観測を行いました。ETHから来た3人の研究者からなるもう一方のチームは、カービングフロントに面した小高い山の山頂部に第2キャンプ(通称Hill)を置き、レーダーとドローンを用いて氷河の流動を監視しました。今回の観測では各チームが互いにサポートしあうことによって、優れたチームワークを発揮することができました。

2017年6月8日から12日にかけて、スウェーデン北部のウメオで第9回北極社会科学国際会議ICASS IX(The Ninth International Congress on Arctic Social Sciences)が開かれました。当会議は、北極域に関する社会科学研究者の国際組織IASSA (International Arctic Social Sciences Association)の主催によるもので、現在のIASSA会長Peter Sköld氏の所属先で事務局の置かれているウメオ大学北極研究センター(ARCUM)が、同大学のサーミ言語・文化研究機関とともに組織しました。IASSA本体は、社会科学諸分野を横断する北極域研究者のネットワーク構築を目的として1990年に創設された国際組織で、三年周期で交代する事務局の本拠地で一度ずつ国際会議を開くことになっています。