ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

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ArCSテーマ4では、北極海で進行する海洋酸性化が炭酸カルシウムの殻を持つプランクトンに与える影響を評価する研究の一環として、太平洋側北極海で係留系を用いた定点観測を行っています。2018年8月に、一年間水中の粒子を捕集するセジメントトラップとpHや海氷厚などを計測するセンサーを伴う海底固定型係留系を設置するため、韓国極地研究所の砕氷船ARAON(アラオン)号北極海航海(Leg 1)に乗船しました。

ケープ・バラノバ基地は、ロシア北極海のセヴェルナヤ・ゼムリャ諸島ボリシェヴィク島(79°18'N 101°48'E)に位置し、ロシア北極・南極研究所(AARI: Arctic and Antarctic Research Institute)が維持運用する観測基地です。1980年代に開設され、1990年代に一旦閉鎖されましたが、2013年8月に再開されました。国立極地研究所や東京大学をはじめとする日本の研究機関とAARIとによる大気分野の共同観測を開始するにあたり、設備の視察も兼ねて2017年11月に現地を訪問しました。

この度の台風21号により、被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

2018年9月4日、台風21号が「非常に強い」勢力を保ったまま、四国地方に上陸しました。この勢力で上陸したのは25年ぶりだそうです。四国・中国・近畿地方など各地に甚大な被害をもたらしたこの台風は、北日本をかすめながら日本海を北上します。北日本は台風に遭遇するのは非常に稀なため、風水害の備えという観点から言うと手薄かもしれません。正確な台風の進路予想は日本全国どこにいても重要です。

7月29日にカナック村にて、「環境変動が生活に与える影響」に関するワークショップを開きました。このワークショップの目的は、村の人々に我々の研究取り組みを伝え、氷河や海洋の変動について知ってもらうと同時に、村人が感じる地域の環境変化とその生活へのインパクトについて話を聞き、情報交換を行うことです。2016年から始まり、今年で3年目となる今回のワークショップでは、北海道大学や京都大学、またカルガリー大学から考古学の研究者らも参加しました。私たちは、カナック氷帽や河川の流量観測、Bowdoinフィヨルドでの海洋観測、そしてシオラパルクでの地滑り調査の結果を紹介しました。

グリーンランド氷床の質量損失に伴う海水準上昇は我々人類の喫緊の課題です。EGRIP深層コア掘削プロジェクトはデンマークをはじめとする様々な国が参加する国際協同プロジェクトで、北東グリーンランド氷流(Northeast Greenland Ice Stream; NEGIS)と呼ばれる、氷床流動が非常に速い地点で深層コア掘削を行っています。氷流はグリーンランド氷床の質量損失に大きく影響します。

北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターでは、7月5日と6日の二日にわたり、国際シンポジウム「移りゆく北極域と先住民社会――土地・水・氷」On Land, Water and Ice: Indigenous Societies and the Changing Arcticが開かれました。スラブ・ユーラシア研究センターとArCSの合同主催による本シンポジウムでは、今日北極域の先住民が直面している様々な変化を主題として、初日に基調講演が行われ、続いてテーマごとに五つのセッションで報告が行われました。

今日、北極域で起きていることと、地球の温暖化現象との間に見いだされる関連性について、科学者の間で強い危機感が持たれる一方で、一般においては懐疑的な見方が広がっていることは、否定できません。「地球温暖化はウソ」という主張が、科学的な論証を覆すものではないとしても、科学者は温暖化の側面ばかりを強調しすぎではないかという意見が根強くあるようです。世界の超大国で、「不都合な真実」が隠されているというかつての指摘が、温暖化を論じる者にとって都合のよい真実ばかり表に出されているという指摘の反撃を受けているのをみると、一般に地球温暖化の議論に対して抱かれる不信感を完全にぬぐい去ることは、不可能なようにも思えます。このような中で、ArCSに携わる研究者が一般市民に対して果たすべき使命の一つとしてあげられるのは、北極域の今をできるだけ多方面から解説する努力を重ねることでしょう。

北極陸域では、水循環の強化(※1)を起因とする、積雪の増加、永久凍土の衰退、及び河川流量の増加などの現象が観測されています。海氷の減少は開氷面を増加させ蒸発を促進し、大気を湿潤化し、陸上に多量の降雪をもたらします。積雪の増加はその断熱効果によって永久凍土の温暖化に影響を与えます。また温暖化による春の融雪水の増加は、北極海に流入する河川流量に影響を与えます。海氷減少と陸域水循環の強化との関係を調べるために、起源追跡(※2)が可能な水同位体比に着目し、海洋と陸域に降水同位体比観測ネットワークの構築を進めてきました。

私は2017年3月3日から5月31日にかけて、ドイツのAlfred Wegener研究所 (AWI) にArCS若手研究者海外派遣支援事業の助成を受けて滞在しました。私の滞在したブレーマーハーフェンという町はのどかな港町で、近郊を流れるウェザー川のほとりでは人々が毎日集まってお酒や散歩を楽しみ、非常にのんびりとした時間を過ごしていました。