ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

Inglefieldフィヨルドでの海洋観測とケケッタ村住民とのワークショップ

カナック氷河での観測やカナック村でのワークショップを終え、私を含む海洋観測グループは、8月13日から5日間Inglefieldフィヨルドで海洋観測を行いました。

InglefieldフィヨルドはTracy氷河やHeilprin氷河など流れの速い氷河が複数流入するフィヨルドです。これらの氷河から流入する淡水や土砂が、Inglefieldフィヨルド内の物質循環や動・植物プランクトンに与える影響を調べるため、フィヨルド内で採水と動・植物プランクトンのサンプリングを行いました。また、氷河の末端変動と海底地形の関係を調べるために、ソナーによる測深を行いました。これらの観測は、カナック村の研究協力者が操船する小型ボートで実施したものです。

規模の大きいInglefieldフィヨルドを観測するためには観測拠点が必要です。今回、私たちはカナック村東約60 kmに位置するケケッタ村に拠点を設けました。ケケッタ村はカナック村より小さく、現在は約30人ほどが生活しています。村ではアザラシやイッカククジラの狩猟が盛んにおこなわれています。今回は狩猟の時期と重なっていたこともあり、多くの村人が村を離れていたようです。ケケッタ村滞在中には捕獲されたイッカククジラが解体される様子を見ることが出来ました。新鮮なイッカククジラの刺身は、ツブ貝のような食感で、濃厚な味がしました。

8月16日にはケケッタの村人に研究活動を報告するワークショップを開催しました。夜中の開催にも関わらず、村のほぼ全員が参加し、通訳を介して活発な情報交換が出来ました。村人からは、ケケッタ村周辺でも海氷が薄くなったと感じているとの声が上がりました。また最近はInglefieldフィヨルドで、これまで流れてこなかった北極海の多年氷が見られるとの声も上がりました。私たちの海洋観測で得られた海底地形マップを紹介すると、漁を行う際に参考にしたいと多くの参加者が手に取っており、私たちの研究が彼らの役に立つ部分も大きいのだと実感しました。

藤支 良貴(北海道大学)


調査地周辺の衛星画像


Inglefieldフィヨルドで採水しています.


観測に協力してくれた村人が航路を確認しています.


ワークショップではケケッタ村周辺の海洋環境について活発に議論が行われました.