ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

グリーンランド北西部におけるカナック氷帽の質量収支と融解水流出の観測

ArCSテーマ2「グリーンランドにおける氷床・氷河・海洋・環境変動」で実施している、グリーンランド北西部カナック地域における氷河・海洋観測活動を報告します。我々の観測グループでは6月末から8月末にかけて、カナック村の北側に位置するカナック氷帽の観測を行っています。カナック氷帽では2012年から表面質量収支と氷流動速度の継続観測を行っており、現地観測が不足しているグリーンランドの北西部において貴重なデータを研究コミュニティに提供しています。氷帽上には6つのサイトを設けて気象測器やタイムラプスカメラを設置し、氷河の融解量や表面状態の変化を記録しています。今夏は例年と比べて非常に気温が高く、近年その質量を失いつつあるカナック氷帽にどのような影響を与えるのか、注意深く観測を行っています。

氷帽から流出する河川では、2017年から継続して流量の観測を行っています。2015年と2016年には、この河川が増水して村と空港を繋ぐ橋が破壊される災害が発生しました。これらの河川流量の増加は雪氷融解量の増加と激しい雨によるものです。我々はこの災害を、変わりつつある北極圏に位置する氷河が人間社会に影響を及ぼし始めている顕著な例と認識しています。気候変動が社会に与える影響評価の一例として、氷河の融解量や河川流量の定量化を研究活動の一つに設定しています。氷河と河川で得られたデータを比較し、その関係性を理解することでカナック氷帽の融解水流出モデルを構築します。これらの解析を通して河川流量変動の将来を予測し、カナック村の持続可能な未来を模索することが本研究の目的です。

今後は海洋観測や地すべり調査を実施する他、カナック村の人々に私達の研究活動の内容を伝えるワークショップを予定しています。得られたデータを公表できる日を楽しみにして、活動を続けていきます。

近藤 研(北海道大学)


カナック氷帽での積雪観測。積雪水当量を求め、氷河の表面質量収支を決定する


カナック氷帽を流れ下る融解水


氷河流出河川での流量観測

2019年度カナック調査観測メンバー:近藤研、浅地泉、杉山慎、王鄴凡、安藤卓人、櫻木雄太


過去のカナック調査観測はこちらから

<2016年>
グリーンランド北西部カナックでの観測(カナックから①)
グリーンランド・ボードイン氷河での野外観測(カナックから②)
グリーンランド北西部フィヨルドでの海洋観測(カナックから③)
カナックの村人とのワークショップ(カナックから④)

<2017年>
グリーンランド北西部、氷床上の観測1 —自動気象測器のメンテナンスー
グリーンランド北西部、氷床上の観測2 —ボードイン氷河における観測—
カナックの住民とのワークショップ
グリーンランド北西部フィヨルドでの海洋調査

<2018年>
グリーンランド北西部カナック氷帽と流出河川での調査
カナック村住民とのワークショップ
Inglefieldフィヨルドでの海洋観測とケケッタ村住民とのワークショップ