ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

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2018年10月29~30日にかけて、北極評議会のSDWG定例会合がフィンランド議長国のもと、同国ロバニエミにて開催されました。16か国15機関から約90名が出席しました。会期中、SDWGプロジェクトの実施担当者より進捗状況についての報告がテーマ別に行われました。

東北アジア地域は、北半球の寒極が含まれ、人間が暮らす場所としては地球で最も寒冷な地域の一つです。熱帯アフリカで生物進化をとげたはずの人類はどのようにしてこの厳しい環境に適応するようになったのでしょうか。この点で鍵となるのは文化適応です。人類の行動や観念は、移動自体も含めて人間—環境の相互作用の結果として形成され、さらに変化していきます。人間の文化適応は不可逆的な単なる環境決定論なのではなく、ある条件の社会生態体系における蓋然性によって定められる複合的な進化的事象のある過程とみることができます。このような認識のもと、このプログラムが目指すのは、関連する研究者の国際的共同において知識の交換をすることであり、そのことによって東北アジア地域の地球科学、生物学、考古学、人類学を総合化し、新しい文理融合の地域研究の可能性を探ることにあります。

本シンポジウムは、ArCS北極域研究プロジェクトにおけるテーマ1(気象・海氷・波浪予測研究と北極航路支援情報の統合)が進める自然科学・工学研究と、テーマ7(北極の人間と社会:持続的発展の可能性)が進める人文社会科学分野の研究成果を共有し、これを多様なステークホルダーに紹介することを目的として開催しました。第1部は双方の研究グループからの研究トピックの紹介です。テーマ1からは、海洋地球研究船「みらい」が実施した初めての初冬の北極航海の紹介がありました。この航海をサポートしたのが、ArCSを通じて開発された海氷の衛星観測情報、これを利用した気象・海氷予測、観測船でこれら情報を受信するシステムです。この航海から、気象・海氷・船体着氷などに関する研究成果が紹介されました。テーマ7からは、気候変化に直面する北極圏社会に関し、経済開発、環境と人間のインタラクション、北極に関する政策研究の概要と、研究成果の紹介がありました。人文社会科学分野の研究アプローチを通じて、自然科学研究の成果を含めた北極圏における環境教育教材を提供した事例や、ロシア北極海沿岸を通る北極海航路が今後はエネルギー資源の輸送回廊となりうることなどが紹介されました。

ArCS国際連携拠点のひとつであるIARC(アラスカ大学フェアバンクス校国際北極圏研究センター)では、開設20周年にあたり、「Japan - U.S. Arctic Science Collaboration-Reflections on the Past Two Decades and Future Opportunities-」と題した会合が2019年3月4日(月)~6日(水)に開かれました。この一環として、ArCS国際連携拠点メニューでは、IARCにおける共同研究の推進を目的とするワークショップ「ArCS Workshop for Promoting Arctic Collaboration between IARC/UAF and Japan」を会合2日目の3月5日(火)に実施しました。ワークショップには、日米双方から約50名の参加がありました。

CBirdは北極評議会CAFF(北極圏植物相・動物相保存作業部会)の元にある北極域の海鳥に関する専門家作業グループです。CBirdには北極圏8カ国に加え、オブザーバー国4カ国(日本、イギリス、オランダ、フランス)が参画しています。2019年の年次会合はアイスランドのアークレイリのCAFF事務局において3月26日〜29日に開催されました。今回の会合では進行中のプロジェクトの進捗報告、また今後のプロジェクト計画に関する議論が行われました。